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6月13日 イラクサと初めてのパブ

 草が茂っている道を歩いている内に、手がヒリヒリし出した。手の甲と腕が赤くなっている。発疹も出来ている。痛い。何だろうと見回すとイラクサだ。葉の刺毛に触れると鋭い痛みを与える植物。日本にもあって名前は知っているが刺されたのは初めてだ。気をつけてみればフットパスのへりに沢山生えている。半袖で歩いているので密生した場所では両腕を上げて歩かなければならない。この日、刺された痛みが夕方まで続いた。だが日がたつ内に草に触れても気にならなくなった。耐性ができたのだろうか。

週刊朝日百科「世界の植物」によると、イラクサはアンデルセンの「王女と11羽の白鳥」の話の中に出てくる。魔法をかけられて白鳥に変えられた兄弟の王子達を、元に戻すための試練として、王女が素手でイラクサの糸を紡いでシャツを作るという。試練になるのはイラクサが触れると痛いからだ。昔ヨーロッパでもイラクサの繊維から布が織られ、また若芽は食用になったという。

 日本でもイラクサの仲間、カラムシから越後上布が織られ、刺されると痛いミヤマイラクサの若芽は、東北地方ではアイコと呼ばれて食用になる。日本とヨーロッパ、ユーラシア大陸の両端で、刺されると痛い同じ植物を食用にしたり、布に織ったりするという生活技術が存在したのは、どこかに起源があるのだろうか。それとも旧人類の遺産?

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初めてのパブ

 今日のコースは昼頃小さな村を通るので、1000ccのペットボトルに水を詰めてきた。水は十分だと思っていたら、小さな丘の上り下りを繰り返している内に午前中で飲みきってしまった。山登りで飲む水は普通一日2000cc、今日は上天気と言うこともあって同じペースだ。地図を見るとフットパスが一般道と交わるところに、パブのマークがある。ちょうどお昼だし、何か頼むか。イギリスに来て初めてのパブだ。

小さな集落を抜けると、自動車道路に面してパブがあった。いつも調理したての料理を提供しますという看板が出ている。入り口は目立たない木の扉。開けると少し薄暗い。中はかなり広くて、沢山テーブルが並び、カウンターだけが明るくてボトルなどがキラキラ輝いている。男達が数人、立ったままビールか何か飲んでいる。テーブルにもちらほら客がいて、トーストとサラダの盛り合わせのようなものを食べている。居酒屋の女将というような気さくな初老の女性がとり仕切っている。私は選ぶのが面倒なので、メニューの一番上に書いてあるトラディショナル・フィッシュアンドチップスと水を頼んだ。6ポンド50ペンス、1300円ほど。支払いは前払いだ。

席は向こうと自分で指さして、奥の席に着く。壁には剣やまさかりと言った昔の武具が飾られていて、いかにも古い建物の雰囲気だ。しばらくすると大きな皿が運ばれてきた。長三角形の魚のフリッターが4枚、太切りのポテトチップが山盛り、レタスとキュウリのサラダ、ゆでたグリンピースの小山。かなりの分量だ。魚は鱈のような白身の魚、フリッターもポテトも揚げたてだ。テーブルの上には塩と胡椒、ビネガーの小瓶があるだけ。それらを振りかけて食べる。素朴で健康的な食事だ。フランス料理のようなしゃれた料理が好きな人たちはまずいというかも知れない。でも普段自分でも素朴な、料理とも言えない料理を作っている私には、なかなかおいしい。水が運ばれていないので、カウンターにペットボトルを持っていって詰めてもらう。

旅行案内書にはイギリスの水は生で飲めるが、硬水なのでおなかをこわす人もいる、と記されている。私には硬水か軟水か分からない。でも全く味のしない水、つまりカルキ臭がしない水で、おいいしい。ロンドンでもそうだった。どういう消毒法をしているのだろう。

田舎には食料品店も滅多にない。パブはちいさな村に一軒、と言う風だ。お昼はパブで食べよう。それも楽しみだ。ところでパブ、バー、イン、フリーハウス、どれも居酒屋だ。昼間から酒と食事を提供している。昼の部は午後3時まで、夕方は7時からというところもある。村の集会所のようなものだろう。私は酒を飲まないので、夜のパブがどんな雰囲気なのか分からない。

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