« 2010年1月 | トップページ

2010年3月

6月13日 トマートン

パブを出てしばらく歩くと生け垣が木の柵に変わって、向こうが見通せる場所があった。大きな木々に囲まれた広々とした芝生の庭がある。奥には二階建ての大きな建物、庭には三々五々人々が歩いている。看板にはナショナルトラスト、ディーラムパーク、国道に面した門からお入りください、とある。貴族が屋敷を持ちきれなくなり、ナショナルトラストに委ね、一般公開されているのだ。広大な敷地なので国道側まで回る気にならず、写真を撮るだけにする。
P7153448b

自動車道路

 トマートンの村の手前で高速道路を越える。一般道路が高速道路に交差し、インターチェンジになっている。こちらは一般道路を渡るのだ。車がひっきりなしに通るので渡りにくい。緊張感が走る。自分がウサギやキツネになったような気分だ。牛や羊の中を歩いてきているので、自動車が怪物のように思える。道路の向こう側に、大きな荷を背負った男女4人組の徒歩旅行者がやってきた。大きく手を振って大急ぎですれ違う。向こうも道路を渡ろうとして必死の様子だ。

P7153459b

トマートン

 トマートンに着いたのは4時過ぎ、パブらしい建物にアコモデーション(宿泊)という看板も見えるが、しまっている。もうやめている感じだ。通りすがりの女性に、この辺にB&Bがないかと訊ねると、笑顔でこの道をまっすぐ行って、交差した道の向こう、と教えてくれた。人気のない寂しい村を抜けると交差点の向こうに一軒の農家があった。B&Bの小さな看板もある。庭に数人の男女がたむろしている。一人の男が近づいてきた。宿の主人らしい。空室があるかと聞くとあると言う。えっ!とかえって驚く。ウェールズでは断られてばかりいたからだ。ほかの人々は泊まり客の夫婦とその娘のようだ。奥さんがどこから来たのか聞くので、バースからと答えると驚いていた。バースの町はきれいかと聞くので、とても美しいところだと答えた。明日バースに行くのだろう。

 宿の主人が二階の部屋に案内しながら、日本人かと聞くのでそうだ、どうして分かったのかと訊ねるとニヤッと笑って答えない。田舎で極東人というと日本人というイメージがあるのだろう。ロンドンやバースは中国人でいっぱいだった。
部屋はまずまず、トイレ付きシャワー室があり、ダブルベッド、ソファもある。30ポンド、少し高いが仕方がない。ウェールズの片田舎とは違うのだ。シャワーを浴びて昨日ハヴァーフォードウェストで買ったパンの残りを出して食べる。部屋にはポットとインスタントコーヒー、紅茶、二種類のビスケットの袋があるので夕食はそれで終わり。

外に散歩に出る。石垣と玄関の周りに花を植えたきれいな家が多い。でも生活の臭いがしない。コテッジという看板が出ていたりするから、貸別荘が多いのだろう。大きな屋敷にサマセットハウスという表札がかかっている。金持ちの家だろうか。店一つない村なのですぐ部屋に戻る。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

6月13日 イラクサと初めてのパブ

 草が茂っている道を歩いている内に、手がヒリヒリし出した。手の甲と腕が赤くなっている。発疹も出来ている。痛い。何だろうと見回すとイラクサだ。葉の刺毛に触れると鋭い痛みを与える植物。日本にもあって名前は知っているが刺されたのは初めてだ。気をつけてみればフットパスのへりに沢山生えている。半袖で歩いているので密生した場所では両腕を上げて歩かなければならない。この日、刺された痛みが夕方まで続いた。だが日がたつ内に草に触れても気にならなくなった。耐性ができたのだろうか。

週刊朝日百科「世界の植物」によると、イラクサはアンデルセンの「王女と11羽の白鳥」の話の中に出てくる。魔法をかけられて白鳥に変えられた兄弟の王子達を、元に戻すための試練として、王女が素手でイラクサの糸を紡いでシャツを作るという。試練になるのはイラクサが触れると痛いからだ。昔ヨーロッパでもイラクサの繊維から布が織られ、また若芽は食用になったという。

 日本でもイラクサの仲間、カラムシから越後上布が織られ、刺されると痛いミヤマイラクサの若芽は、東北地方ではアイコと呼ばれて食用になる。日本とヨーロッパ、ユーラシア大陸の両端で、刺されると痛い同じ植物を食用にしたり、布に織ったりするという生活技術が存在したのは、どこかに起源があるのだろうか。それとも旧人類の遺産?

P7153451b

初めてのパブ

 今日のコースは昼頃小さな村を通るので、1000ccのペットボトルに水を詰めてきた。水は十分だと思っていたら、小さな丘の上り下りを繰り返している内に午前中で飲みきってしまった。山登りで飲む水は普通一日2000cc、今日は上天気と言うこともあって同じペースだ。地図を見るとフットパスが一般道と交わるところに、パブのマークがある。ちょうどお昼だし、何か頼むか。イギリスに来て初めてのパブだ。

小さな集落を抜けると、自動車道路に面してパブがあった。いつも調理したての料理を提供しますという看板が出ている。入り口は目立たない木の扉。開けると少し薄暗い。中はかなり広くて、沢山テーブルが並び、カウンターだけが明るくてボトルなどがキラキラ輝いている。男達が数人、立ったままビールか何か飲んでいる。テーブルにもちらほら客がいて、トーストとサラダの盛り合わせのようなものを食べている。居酒屋の女将というような気さくな初老の女性がとり仕切っている。私は選ぶのが面倒なので、メニューの一番上に書いてあるトラディショナル・フィッシュアンドチップスと水を頼んだ。6ポンド50ペンス、1300円ほど。支払いは前払いだ。

席は向こうと自分で指さして、奥の席に着く。壁には剣やまさかりと言った昔の武具が飾られていて、いかにも古い建物の雰囲気だ。しばらくすると大きな皿が運ばれてきた。長三角形の魚のフリッターが4枚、太切りのポテトチップが山盛り、レタスとキュウリのサラダ、ゆでたグリンピースの小山。かなりの分量だ。魚は鱈のような白身の魚、フリッターもポテトも揚げたてだ。テーブルの上には塩と胡椒、ビネガーの小瓶があるだけ。それらを振りかけて食べる。素朴で健康的な食事だ。フランス料理のようなしゃれた料理が好きな人たちはまずいというかも知れない。でも普段自分でも素朴な、料理とも言えない料理を作っている私には、なかなかおいしい。水が運ばれていないので、カウンターにペットボトルを持っていって詰めてもらう。

旅行案内書にはイギリスの水は生で飲めるが、硬水なのでおなかをこわす人もいる、と記されている。私には硬水か軟水か分からない。でも全く味のしない水、つまりカルキ臭がしない水で、おいいしい。ロンドンでもそうだった。どういう消毒法をしているのだろう。

田舎には食料品店も滅多にない。パブはちいさな村に一軒、と言う風だ。お昼はパブで食べよう。それも楽しみだ。ところでパブ、バー、イン、フリーハウス、どれも居酒屋だ。昼間から酒と食事を提供している。昼の部は午後3時まで、夕方は7時からというところもある。村の集会所のようなものだろう。私は酒を飲まないので、夜のパブがどんな雰囲気なのか分からない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2010年1月 | トップページ