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6月9日 海沿いの小道とナショナルトラスト

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宿を出て牧場やじゃがいも畑の間の自動車道をしばらく歩き、マーローズサンズという浜に出る。そこからはまた崖づたいの花の道だ。

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1時間ほど歩いてスカイ島への船が出るというマーチンズヘヴンに着く。小さな半島のくびれた部分にあり、自動車道もここまで来るのでキャンプ場もあり、車で来た人々がちらほら。小さなビジターセンターのようなものがあり、クラゲやウミウシのような生物の写真が並んでいた。

建物の壁に船の時刻表が貼ってある。なるほど月曜には島巡りしかないが、ほかの日には島巡りと島上陸のコースがある。その建物のほかには公衆トイレ以外何もない。ここはペンブロークシャー海岸国立公園、茶店の一軒もあっていいんじゃないか?と思う。人々は小さな半島にあるフットパスを歩くか、船に乗ってクルーズするか、崖沿いのフットパスを歩くしかないのだ。行楽地、観光地ではない。静かに自然の有様を楽しむ場所なのだ。それに徹している。

地図を見れば、ここはナショナルトラストの所有地だ。私のトラスト初体験である。ナショナルトラストとは、19世紀末に湖水地方から始まり、自然保護と伝統文化遺産の保護と公開を目的とする民間団体で、歴史的建造物や自然豊かな土地を、購入したりあるいは委託されたりして、保護管理運営している。

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地図上の紫色の四角のマークがナショナルトラストの印し

ナショナルとは国家ではなく国民、あるいは国抜きの、民の、と言う意味。トラストは信託、と言う法律用語ではなく、信頼という言葉がふさわしいようだ。だから日本語には翻訳しにくい。そのままナショナルトラストいう言葉が定着している。

ナショナルトラストの所有地もいわば私有地だ。民間業者が入る余地は全くない。湖水地方の自然保護運動は、19世紀半ば、詩人ワーズワースの鉄道延長反対運動がきっかけらしい。

鉄道によってもたらされる工業、観光その他自然破壊に繋がる動きが、詩人の愛する湖水地方に侵入してくるのを、詩人自身が身をもって阻止したのだ。ピーターラビットの著者ビアトリクス・ポッターもナショナルトラスト創設者の一人。彼女は絵本の大ヒットの収入により購入した土地をナショナルトラストに寄贈している。

私有財産を厳格に守ることを社会の大原則にしているこの国で、自然や文化遺産を守ることは、ナショナルトラストの私有財産を殖やすという形しかなかったのだ。国立公園が設定されるのは第二次大戦後になってから。民間の活動が遥かに先行している。

現在は車社会。鉄道のないところにも自動車道ができ、観光客のバスやマイカーが進入してくる。自然保護と言っても、人々が保護された自然を楽しむ、と言う側面がなければ成り立たない。そこには難しいバランスの問題が常に存在する。この国は自然保護と観光のバランスの支点を、相当自然保護寄りに置いている。

この国、という言い方は司馬遼太郎の「街道を行く」風で自分でもちょっと気になる。英国、というのが普通の呼び方だろう。正式にはUnited Kingdom  連合王国である。これは北アイルランドとイングランドの連合王国。実態としては北アイルランド併合以前に、長い間の戦いの後に併合されたウェールズとスコットランドを加えた、北アイルランド、イングランドの連合体である。

イギリスという語はイングランドを意味する。英国はその略称だ。イングランド以外の地に行ってこの国をイングランドだと言えば反感を買うと、旅行案内書には書いてある。そこには北アイルランド紛争のように長い悲惨な戦いの歴史があるのだ。旅の間私はイングランドという言葉は使わなかった。UKという味気ない言い方で済ませた。

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